発酵とは
発酵とは微生物が有機物を別の物質に分解することです。
パンに限定すると、パン酵母が生地内の糖分を炭酸ガスとアルコールに分解します。
発酵によって発生した炭酸ガスを、小麦粉のグルテンの膜が包み込むことでパンは膨らみます。
グルテンがなければ、炭酸ガスをパン生地の中に閉じ込めておくことはできません。
発酵を行う微生物は3種類
発酵を行う微生物は酵母・細菌・カビの3種類に分類されます。
酵母の仲間
酵母は球状や楕円状の単細胞生物です。
酵母は出芽によって増えていきます。
パンを発酵させるパン酵母以外には以下の種類の酵母があります。
・ワイン酵母
・ビール酵母
・清酒酵母
細菌の仲間
細菌は酵母と同じ単細胞生物ですが、酵母と比べるとサイズがとても小さいのが特徴です。
細菌は細胞分裂によって増殖を繰り返します。
発酵に関する細菌には以下の種類があります。
・納豆菌・・・納豆
・乳酸菌・・・ヨーグルト、キムチ
・酢酸菌・・・お酢、ナタデココ
カビの仲間
カビと聞くと嫌なイメージが多いかもしれませんが、カビも発酵を促す微生物です。
カビは酵母や細菌とは異なり、糸状細胞の微生物です。
カビは胞子を飛ばし、菌糸を伸ばすことで食材の中で広がっていきます。
発酵に関するカビには以下の種類があります。
・麹菌・・・味噌、醤油、日本酒
・青カビ・・・ブルーチーズ
・コウジカビ・・・鰹節
発酵と腐敗の違い
発酵と腐敗の違いは、人間にとって有益か有害かで判断されます。
発酵も腐敗も微生物が有機物を分解し、別の物質に変化させていることに変わりはありません。
腐敗した食品は独特の匂いや、舌がしびれるような味がします。
発酵も同様で風味や旨味がアップしています。
人間にとって有益なら発酵、有害なら腐敗という扱いになります。
一次発酵と二次発酵
パンはつくる過程で2回にわけて発酵を行います。
キメの細かい柔らかいパンを焼くためには、2回に分けて発酵を行うことが必要です。
1回目を一次発酵、2回目を二次発酵(最終発酵)と呼びます。
一次発酵だけでは発生した、炭酸ガスの気泡の大きさがバラバラです。
一次発酵終了後にフィンガーテストを行い、発酵の進み具合を確認します。
一次発酵が終わった後に焼きたいパンの形に成形し、しぼんでしまった生地を膨らませるために行うのが二次発酵です。
なお、パン酵母はパンを焼き上げる温度には耐えることができません。
発酵が足りないパン
発酵が足りないパン生地を焼いてしまうと、ふくらみが悪いパンができあがります。
パンの中身も気泡(すだち)が小さく、ずっしりします。
パンが発酵不足になる原因は、以下の理由が考えられます。
・発酵時間が足りない
・発酵時の温度が低い
・イースト(パン酵母)不足
・パン生地の水分不足
・パン生地の糖分不足
発酵不足のパンを焼いてしまったら、救済することはできません。
発酵しすぎたパン
発酵しすぎたパン生地を焼いてしまうと、膨らみ過ぎるかまったく膨らまないパンになります。
食べてみるとパン生地内の糖分を発酵で使い切ってしまっているため、甘みがありません。
甘みがないだけでなく、発酵により炭酸ガスとアルコールが必要以上に発生しているので、イースト臭やアルコール臭がキツくなります。
パンが過発酵になる原因は、以下の理由が考えられます。
・発酵時間が長い
・発酵時の温度が高い
・イースト(パン酵母)が多い
・パン生地の水分が多い
・パン生地の糖分が多い
発酵不足のパン生地はさらに発酵させれば良いのですが、過発酵になってしまうとやり直すことはできません。
二次発酵を短くすることで救済することが可能な場合もありますが、ピザ生地や揚げパンにするのが良いでしょう。